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肩・腕の痛み

肩・腕の痛み

次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。

  • 肩を上げると痛い、または途中で引っかかる感じがある
  • 腕を後ろに回しにくい(結帯動作・整髪動作が困難)
  • 夜間、横になると肩が痛くて眠れない
  • 肩を動かすとゴリゴリ・ジャリジャリという音や感覚がある
  • 転倒や衝突のあとから肩に痛みと動かしにくさが出た
  • 肩の外側・肘の外側・肘の内側が押すと痛い
  • ものをつかむ・ひねる動作(ドアノブ・雑巾絞り)で肘が痛む
  • 腕・手・指にしびれや脱力感がある
  • 他院で「湿布で様子を」と言われたが改善しない

これらの症状が長引く場合、肩関節周囲炎(五十肩)・腱板損傷・石灰沈着性腱炎・上腕骨外側上顆炎(テニス肘)など、適切な診断と治療が必要な疾患が潜んでいる可能性があります。

受診の目安

受診の目安は以下の通りとなり、早めの診断と治療が肩・腕を長く健康に保つための第一歩です。

  • 痛みや動かしにくさが2週間以上続く
  • 夜間痛があり、睡眠が妨げられている
  • 腕が上がらなくなってきた、または急に力が入らなくなった
  • 転倒・衝突などの外力があった後から症状が出た

当院で主に診療する肩・腕の疾患

代表的な疾患と治療方針

肩関節周囲炎(五十肩・凍結肩)

肩関節周囲炎は、肩関節を包む関節包・靱帯・腱などが炎症・拘縮を起こし、痛みと可動域制限を生じる疾患の総称です。一般に「五十肩」と呼ばれ、40〜60代に多く発症します。病期は大きく3段階に分けられます。
急性期(炎症期)は安静にしていても痛み、夜間痛が著明です。
慢性期(拘縮期)は痛みよりも可動域制限が前面に出て、腕を上げる・後ろに回す動作が制限されます。回復期(解凍期)は徐々に可動域が戻ります。
自然経過で改善することもありますが、適切な治療を行わないと拘縮が残ることがあります。

診断

問診・触診で可動域制限のパターンと痛みの部位を確認します。
X線検査で骨・関節の変化(石灰沈着・変形など)を評価し、腱板損傷との鑑別が必要な場合は超音波(エコー)やMRIを追加します。

治療

当院では病期に合わせた保存療法を第一選択とします。

保存療法
1.生活指導
  • 急性期は無理に動かさず患部を安静に保つ
  • 痛みを誘発する動作(腕を高く上げる・無理な後方挙上)を避ける
  • 就寝時のポジショニング指導(クッションで腕を支えて夜間痛を軽減)
2.運動器リハビリテーション
  • 急性期が落ち着いたら可動域訓練(コッドマン体操・滑車訓練)を開始
  • 肩甲骨周囲筋・ローテーターカフ(回旋筋腱板)の筋力強化
  • 日常動作の改善指導と再発予防プログラム

→痛みが取れるだけでなく、肩の安定性と可動域の回復を目指します。

3.薬物・注射療法
  • 消炎鎮痛剤(内服・外用)で炎症と痛みを緩和
  • 肩関節内・肩峰下滑液包へのステロイド注射:急性期の強い痛みに有効
  • ヒアルロン酸関節内注射:関節の潤滑と炎症抑制を促す
4.物理療法
  • ホットパック・超音波療法・低周波療法で血行改善と疼痛緩和
  • 慢性期の強い拘縮には温熱療法と用手的関節モビライゼーション
手術療法

保存療法を十分に継続しても高度な拘縮が残る場合、関節鏡を用いた関節包切離術が選択肢となります。手術が必要と判断した場合は、以下の連携医療機関へ適切なタイミングでご紹介します。

連携病院について

など

腱板損傷(腱板断裂・腱板炎)

腱板(ローテーターカフ)とは、肩関節を安定させる4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)の腱が一体となった組織です。転倒・衝突などの外傷や、加齢による変性・使いすぎによって腱板が部分的または完全に断裂します。
腕を横から上げるときの痛みや力の入りにくさ、夜間痛が特徴的で、五十肩と症状が似ているため鑑別が重要です。完全断裂になると自力で腕が上がらなくなることもあります。60歳以上では無症状の断裂が画像検査で偶然見つかることも珍しくありません。

診断

問診・触診で損傷部位と程度を推定したうえで、超音波(エコー)検査で腱板の状態をリアルタイムに評価します。断裂の程度や広がりを詳しく確認する必要がある場合はMRIを追加します。

治療

当院では保存療法を第一選択とし、症状・断裂の程度・年齢・活動性に合わせて判断します。

保存療法
1.生活指導・安静
  • 急性期は重いものを持つ・頭上に腕を上げる動作を制限
  • 三角巾・スリングによる患肢の安静保持(急性外傷期)
2.運動器リハビリテーション
  • 残存腱板・肩甲骨周囲筋の筋力強化による代償機能の向上
  • 可動域訓練・肩甲胸郭関節のモビライゼーション
  • 日常生活動作・スポーツ復帰への段階的プログラム
3.薬物・注射療法
  • 消炎鎮痛剤(内服・外用)
  • 肩峰下滑液包へのステロイド注射またはヒアルロン酸注射:痛みと炎症を緩和し、リハビリへの参加を促します
4.物理療法
  • ホットパック・超音波療法・低周波療法による疼痛緩和
手術療法

完全断裂で保存療法に反応せず、活動性の高い方や腕が上がらない状態が続く場合は、関節鏡を用いた腱板修復術が検討されます。手術が必要な場合は連携医療機関へご紹介します。

石灰沈着性腱炎(石灰性腱板炎)

腱板(主に棘上筋腱)にリン酸カルシウムの結晶が沈着し、急激な炎症を引き起こす疾患です。突然発症する激烈な肩の痛みが特徴で、腕がまったく動かせないほどの強い痛みが数日間続くことがあります。30〜50代の女性に多く、原因は完全には解明されていません。X線やエコーで石灰の沈着を確認でき、診断は比較的容易です。
急性期を過ぎると自然吸収されて改善することもありますが、慢性化して断続的に痛みが続くケースもあります。

診断

X線検査で石灰沈着の位置と大きさを確認します。超音波(エコー)検査で石灰の性状(液体状か固形状か)を評価し、注射による吸引が可能かを判断します。

治療

保存療法
1.薬物療法
  • 消炎鎮痛剤(内服・外用)で急性期の強い炎症と痛みを緩和
  • 肩峰下滑液包へのステロイド注射:即効性があり急性期に有効
2.石灰吸引・洗浄
  • 超音波(エコー)ガイド下で石灰に針を刺し、液状化した石灰を吸引・洗浄します
  • 石灰が液状化している急性期に特に有効で、痛みを速やかに軽減します
3.運動器リハビリテーション
  • 急性期後から肩関節の可動域訓練を開始
  • 腱板・肩甲骨周囲筋の強化と姿勢改善指導
4.物理療法
  • 超音波療法・低周波療法による疼痛緩和
  • 体外衝撃波治療:石灰の吸収促進と疼痛軽減に有効
手術療法

保存療法(石灰吸引・体外衝撃波を含む)を十分に行っても改善しない難治例は、関節鏡を用いた石灰除去術が検討されます。手術が必要な場合は連携医療機関へご紹介します。

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)・内側上顆炎(ゴルフ肘)

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)は、肘の外側(外側上顆)に手首を伸ばす筋肉の腱が付着する部位に炎症・変性が生じる疾患です。
テニスのバックハンドに代表されるラケットスポーツに限らず、パソコン作業・家事・重いものを持つ仕事など繰り返しの手首の動作で広く発症します。ドアノブを回す・雑巾を絞る・ものをつかむ際に肘の外側が痛むのが典型的な症状です。
上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)は同じく肘の内側に起こるもので、ゴルフのスイングや投球動作が原因になりやすいです。

診断

問診・触診で外側上顆・内側上顆の圧痛を確認します。チェアテスト・トムセンテストなどの誘発テストで診断します。超音波(エコー)検査で腱付着部の変性・炎症の程度を評価します。

治療

当院では保存療法を第一選択とします。多くは適切な治療と安静で改善します。

保存療法
1.生活指導・安静
  • 症状を悪化させる動作(手首の返し・強い把持)を制限
  • テニスエルボーバンド(カウンターフォースブレース)の装着:前腕筋群への負荷を分散
  • スポーツや作業のフォーム・道具の見直し
2.運動器リハビリテーション
  • 前腕伸筋群・屈筋群のストレッチ
  • エキセントリック(遠心性)収縮訓練:腱炎・腱症の有力なリハビリ法
  • 肩・体幹の筋力強化で肘への負荷を軽減
3.薬物・注射療法
  • 消炎鎮痛剤(内服・外用)で炎症と痛みを緩和
  • 局所ステロイド注射:短期的に有効ですが、腱変性のリスクがあるため頻回投与は避けます
4.物理療法
  • 超音波療法・低周波療法による疼痛緩和と組織修復促進
  • 体外衝撃波治療:難治性の外側上顆炎に有効
手術療法

保存療法(石灰吸引・体外衝撃波を含む)を十分に行っても改善しない難治例は、関節鏡を用いた石灰除去術が検討されます。手術が必要な場合は連携医療機関へご紹介します。