首・腰の痛み(脊椎疾患)
次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
- 首・肩・腕にかけて痛みやしびれがある
- 手足がしびれる・力が入りにくい
- 腰や臀部から足にかけて痛みが走る(坐骨神経痛)
- しばらく歩くと足が痛くなり、少し休むとまた歩ける(間欠跛行)
- 箸の操作・ボタンかけ・字を書くなど手先の細かい動作がしにくい
- 階段の昇降や歩行が不安定になってきた
- 首や腰の痛みが2週間以上続いている
- 他院で「湿布で様子を」と言われたが改善しない
これらの症状が続く場合、頸椎症・椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症などの脊椎疾患が潜んでいる可能性があります。
緊急受診が必要な症状
以下の症状が現れた場合は、速やかにご受診ください。神経への深刻な障害が疑われます。
- 両足のしびれ・脱力と同時に、尿が出にくい・もれるなどの排尿障害が生じた
- 手足の麻痺が急速に進行している
- 転倒・衝突など外傷後に首・腰の強い痛みと神経症状が現れた
当院で主に診療する肩・腕の疾患
- 頸椎症(頸椎症性脊髄症・頸椎症性神経根症)
- 頸椎椎間板ヘルニア
- 頸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
- 腰椎すべり症(変性すべり症・分離すべり症)
- 腰椎分離症
- 変形性脊椎症
- 脊椎圧迫骨折(骨粗鬆症性骨折)
- 腰痛症(筋・筋膜性腰痛など)
代表的な疾患と治療方針
頸椎症(頸椎症性脊髄症・頸椎症性神経根症)
首の骨(頸椎)は7つの椎骨と、その間にあるクッション役の椎間板から成り立っています。
加齢により椎間板が変性したり、靭帯が厚く硬くなったり、骨の端に骨棘(こつきょく)が形成されたりすることで神経が圧迫され、首や肩・腕に症状をきたす状態を「頸椎症」と呼びます。
圧迫される神経の種類によって、症状の現れ方が異なります。脊髄が圧迫される「頸椎症性脊髄症」では両手足への症状が、神経根が圧迫される「頸椎症性神経根症」では主に片側の肩〜腕の症状が現れます。
診断
問診・触診のうえ、レントゲン検査で骨の変形・骨棘を確認します。
神経圧迫の程度や部位を詳しく評価するために、MRI検査を行います。必要に応じてCT検査も組み合わせます。
治療
当院では保存療法を第一選択とします。重篤な神経症状がある場合を除き、以下を症状・病期に合わせて組み合わせます。
保存療法
1.生活指導・装具療法
- 首を後ろに反らす動作・うつ伏せ寝を避ける
- パソコン・スマートフォン使用時の姿勢を見直す
- 頸椎カラー(ネックカラー)で首を固定・安静に保つ
- 枕の高さを調整し、頸椎に負担のかかりにくい睡眠姿勢を整える
2.運動器リハビリテーション
- 頸部・肩甲骨周囲の筋肉のストレッチ・筋力訓練
- 姿勢改善トレーニング(体幹・肩甲帯の安定化)
- 日常生活・仕事での頸部負担を減らす動作指導
→首周囲の筋力を高めることで頸椎を支え、症状の改善と再発予防を図ります。
3.薬物・注射療法
- 消炎鎮痛薬(内服・外用)
- 筋弛緩薬・神経障害性疼痛治療薬
- 神経根ブロック・硬膜外ブロック:痛みが強い時期に痛みの悪循環を断ち切ります
4.物理療法
- 温熱療法(ホットパックなど)
- 低周波・干渉波などの電気療法
- 超音波療法
手術療法
保存療法を一定期間行っても改善が得られない場合、または手足の麻痺・膀胱直腸障害など重篤な神経症状がある場合は、手術を検討します。
当院は以下の連携医療機関と密接に連携し、適切なタイミングでご紹介します。
連携病院について
- 慶應義塾大学病院
- 日本赤十字社 武蔵野赤十字病院
- 杏林大学医学部付属病院
- 医療法人財団 荻窪病院
- 独立行政法人国立病院機構 東京医療センター
- 北里研究所病院
- 東京慈恵会医科大学付属病院
- 東大病院
- 防衛医科大学校病院
など
頸椎椎間板ヘルニア
椎骨と椎骨のあいだでクッションの役割を果たす椎間板の内部には、「髄核(ずいかく)」というゲル状の組織があります。椎間板に亀裂が生じると髄核が外へ飛び出し(ヘルニア)、脊髄や神経根を圧迫することで症状が現れます。
30〜50歳代に多く、不良姿勢・長時間のデスクワーク・頸部に負担のかかるスポーツなども発症に影響します。
主な症状
神経根圧迫の場合(片側性)
- 首・肩・腕・手のしびれや痛み
- 握力の低下
- 腕や手指の感覚障害
脊髄圧迫の場合(両側性)
- 両手のしびれ・巧緻運動障害(箸・ボタンなど)
- 歩行のふらつき・下肢の脱力
- 膀胱直腸障害(頻尿・尿もれ)
診断
問診・触診のうえ、レントゲン検査・MRI検査を行い、ヘルニアの部位と神経圧迫の程度を確認します。
治療
多くの場合、2〜3か月の保存療法で症状が改善します。頸椎カラーによる安静・薬物療法・神経ブロック・リハビリテーションを組み合わせます。
保存療法で改善しない場合や麻痺が進行している場合は、連携病院への手術紹介を行います。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎の椎間板の内容物(髄核)が脊柱管内へ突出して神経を圧迫することで症状をきたす疾患です。20〜40歳代の比較的若い世代にも多く見られます。
お尻から太もも・ふくらはぎ・足先にかけての痛みやしびれ(坐骨神経痛)が比較的急激に現れる場合には、本疾患が疑われます。
診断
問診・触診・徒手検査・レントゲン検査に加え、MRI検査でヘルニアの位置と神経圧迫の程度を確認します。
治療
当院では保存療法を第一選択とします。重度の場合でも手術は最終手段とし、以下を症状・病期に合わせて組み合わせます。
保存療法
1.生活指導・装具療法
- 急性期は腰部コルセットで脊椎を安定させ安静を保つ
- 重い荷物の持ち上げ・前かがみの継続を避ける
- 痛みが落ち着いたら、適度なウォーキングで血流と筋力を維持する
2.運動器リハビリテーション
- 体幹筋(腹横筋・多裂筋)の安定化訓練
- 股関節・ハムストリングのストレッチ
- 腰に負担をかけない動作の習得(モーターコントロール指導)
3.薬物・注射療法
- 消炎鎮痛薬(内服・外用)
- 神経障害性疼痛治療薬
- 硬膜外ブロック・神経根ブロック:強い痛みの時期に有効です
4.物理療法
- 温熱療法
- EMS:筋電気刺激療法
- 牽引療法
手術療法
保存療法を行っても症状が残る場合、下肢筋力低下などの神経症状が進行している場合、または早期の社会復帰を目指す場合には、連携病院での手術(ヘルニア摘出術など)をご案内します。
腰部脊柱管狭窄症
脊柱管とは背骨の中にある神経の通り道のことです。加齢に伴い椎間板が膨らんだり、椎間関節や黄色靭帯が肥厚したりすることで脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて症状が現れます。
50歳代以降、特に高齢の方に多く見られます。
特徴的な症状:間欠跛行(かんけつはこう)
本症の最も特徴的な症状が「間欠跛行」です。しばらく歩いているとお尻から足にかけて痛み・しびれが増して歩けなくなりますが、少し前かがみになって休むと症状が和らぎ、また歩き出せます。「歩いては休む」を繰り返す状態が典型的です。自転車には支障なく乗れることも特徴のひとつです。
診断
問診・触診・レントゲン検査で腰椎の変性・変形を確認したうえで、MRI検査により脊柱管の狭窄の程度と神経圧迫の部位を詳しく評価します。
治療
当院では保存療法を第一選択とします。以下を症状・病期に合わせて組み合わせます。
保存療法
1.生活指導・装具療法
- 腰部コルセットで腰椎を安定させる
- 長距離歩行の際は杖の使用を検討する
- 前かがみ姿勢(自転車・シルバーカーなど)が楽になる特性を活かした移動手段の工夫
2.運動器リハビリテーション
- 体幹・骨盤周囲の筋力強化
- 下肢筋力・バランス訓練
- 水中歩行など関節への負担が少ない有酸素運動の指導
3.薬物・注射療法
- 血流改善薬(プロスタグランジン製剤):神経の血流を回復させます
- 消炎鎮痛薬・神経障害性疼痛治療薬
- 硬膜外ブロック・神経根ブロック
4.物理療法
- 温熱療法
- 牽引療法
- 電気療法(低周波・干渉波など)
手術療法
保存療法で十分な効果が得られない場合、または下肢の筋力低下・膀胱直腸障害など神経症状が進行している場合は、連携病院での手術(脊柱管拡大術・椎弓形成術など)をご案内します。
